第6夜 | さようなら

ある日、いつものようにカササナが歌いながら木に積もったすすを掃除していると、どこからともなく鈴の音を鳴らすようなかすかな音が聞こえてきました。 最初は気にも留めていませんでした。けれども、その音はカササナが掃除をする時間…

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第3夜|もぐらの占い師

第3夜|もぐらの占い師

占いと言えば、よく当たる占い師というのはいつの時代も大変な人気者。 数年前、このもぐら町にもよく当たると評判の占い師がいました。占い師の家の前はいつも長蛇の列。狭い待合室の壁はいつもきゅうきゅう言っていました。 占い師は…

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第2夜 | もぐら町

輝く果物さえ手に入れば、島の人たちはすすの降る地上に用なんてありません。皆、そそくさと地下世界への帰路に着きます。 島の人たちが次々とマンホールの中に意を決して飛び降りると、黒曜石のように黒光りするキューブ型の住居が見渡…

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第1夜 | 与える木

第1夜 | 与える木

あなたの故郷から毎年のように飛び立つ渡り鳥たちが、今大きく羽ばたいて高く舞い上がりました。 一番高い空を翔る若い一羽のしなやかな両翼が、どこまでも透き通った空の水色に溶けて流れ始めると、その鳥の眼には、海に浮かぶある不思…

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前夜|暁の合図

前夜|暁の合図

朝のはじまりを告げる朝霧たちが、人知れず語り継いだおはなし。 夜の闇は空と海が溶けあってどこまでも果てがない。 そのはざまで、ぼんやりとたゆたう夜霧たち。 ぴんとした静けさが、真夜中のてっぺんで音もなく弾けると 地平線か…

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