第7夜 | 針金林の長ほうき
カササナは白い息を吐きながら、町外れの林に向かって歩いていきました。丘の上の騒ぎで、彼の小さい体は所々ずきずきと痛みましたが、もぐら町から誰かが追って来るかもしれない恐怖が彼の歩みを前へ前へと進めたのです。 島の西に位置…
カササナは白い息を吐きながら、町外れの林に向かって歩いていきました。丘の上の騒ぎで、彼の小さい体は所々ずきずきと痛みましたが、もぐら町から誰かが追って来るかもしれない恐怖が彼の歩みを前へ前へと進めたのです。 島の西に位置…
ある日、いつものようにカササナが歌いながら木に積もったすすを掃除していると、どこからともなく鈴の音を鳴らすようなかすかな音が聞こえてきました。 最初は気にも留めていませんでした。けれども、その音はカササナが掃除をする時間…
そんな毎日を送るカササナにも、たった1人だけ毎朝挨拶をしてくれる人がありました。それは町の『灯し屋』をしている男でした。 灯し屋という仕事は、随分昔に電球が切れてしまった街灯に、丘の木からもぎ採った輝く果物…
この島に住むひとりの少年が、丘の輝く木の世話をすることになっていました。 少年の名はカササナと言いました。年齢は14、15歳ほどで、輝く木と同じようにほっそりとした色白の少年でした。 髪は沈んだ赤茶色、両目はくりぬいたよ…
占いと言えば、よく当たる占い師というのはいつの時代も大変な人気者。 数年前、このもぐら町にもよく当たると評判の占い師がいました。占い師の家の前はいつも長蛇の列。狭い待合室の壁はいつもきゅうきゅう言っていました。 占い師は…
輝く果物さえ手に入れば、島の人たちはすすの降る地上に用なんてありません。皆、そそくさと地下世界への帰路に着きます。 島の人たちが次々とマンホールの中に意を決して飛び降りると、黒曜石のように黒光りするキューブ型の住居が見渡…
あなたの故郷から毎年のように飛び立つ渡り鳥たちが、今大きく羽ばたいて高く舞い上がりました。 一番高い空を翔る若い一羽のしなやかな両翼が、どこまでも透き通った空の水色に溶けて流れ始めると、その鳥の眼には、海に浮かぶある不思…